茨城大学工学部都市システム工学科水圏環境グループ


Research

太平洋の環礁島の沿岸生態系を守れるか?

TuvaluやMarshall諸島などの環礁(リング形状に広がるサンゴ礁)では、有孔虫(ホシズナなど)やサンゴなどの生物により砂が生産されています。しかし、近年、高人口密度地域では生活排水や廃棄物などの人為的な負荷を受けて、砂の生産力が減少しつつあることが指摘され始めています。これは、将来の海面上昇に対して、国土維持の観点から深刻な問題を引き起こす可能性があります。私たちの研究室では、これまでにこの地域の環礁国の沿岸水質汚濁のメカニズムを明らかにしてきました。次のステップとして、環礁の風土に適した水質保全対策をハード面、ソフト面から提案することを目指しています。2017年度からはMarshall諸島のMajuro環礁で研究を進めています。

   
左:Tuvalu国Funafuti環礁 右:Marshall諸島Majuro環礁の砂(有孔虫・サンゴ片)
   
左:実験室で飼育している星砂(Baculogypsina) 右:分裂した太陽の砂(Calcarina

環礁国向けのエネルギー自立的な排水処理手法の構築は可能か?

微生物が排水を処理する過程で発電できることが知られています。いわゆる微生物燃料電池(Microbial Fuel Cell)です。私たちの研究室では、財源や技術力の乏しい環礁国でも利用可能な栄養塩類除去機能も備えたエネルギー自立的な排水処理手法の構築を目指しています。

   
左:6L規模排水処理装置 右:酸素透過膜を用いた硝化実験

水生生物の環境ストレスから見た水環境の在り方は?

茨城県には涸沼(ひぬま)という汽水湖があり、漁業資源としてはヤマトシジミが有名です。水質環境基準のひとつにCOD(化学的酸素要求量という有機物指標)がありますが、涸沼の場合、珪藻を主体とする藻類が多く生息するためCODは基準値よりも高い値となっています。藻類が多く存在すると、水が濁って見えますので景観上もあまり好ましくありません。一方、藻類はヤマトシジミの餌になるので、藻類が多く生息するのはヤマトシジミの成長にとっては望ましいことであり、涸沼周辺のヤマトシジミ漁師にとっても好ましいことかもしれません。つまり、水質環境基準の達成と、水生生物の保全や地域住民の満足度はトレード・オフの関係にある場合もあるようです。こう考えると、涸沼の水環境はどうあるべきなのでしょうか?単純に水質だけでは答えは出ないようです。私たちの研究室では、ヤマトシジミの環境ストレス(抗酸化力マーカー)を切り口として、水環境の在り方はどうあるべきなのか?模索しています。

   
左:涸沼(大涸沼漁協組合)での採水 右:ヤマトシジミの抗酸化力の応答実験

千波湖からアオコを消せるか?

千波湖(せんばこ)は水戸市を代表する観光資源のひとつですが、アオコの発生が問題になっています。根治的な解決を目指すためにはポイントソース(生活排水など)対策とノンポイントソース(農地など)対策をバランス良く進めることが必須となりますが、これには長い年月を要します。私たちの研究室では、桜川からの導水路が千波湖への唯一の流入水路であることに着目し、この水路でアオコの増殖の原因となるリンを除去する方法を検討しています。リンの吸着剤としては、地元企業や地域住民から回収した廃棄物を利用します。吸着剤として利用した後は、周辺の農地に土壌改良剤として還元します。このように地域と連携しながら廃棄物をカスケード利用することにより、ほとんどコストのかからない即効性のあるアオコ対策の実現を目指します。また、このようなネットワークを活用することで流域対策を加速化させる波及効果も狙います。

   
左:千波湖のアオコ(7月) 右:桜川上流での流速・水質調査

水質情報から水道管の内面劣化を診断できるか?

現在、高度経済成長期に集中的に整備したインフラ施設の老朽化が問題となっています。私たちが毎日約300L使用する水道水を供給する水道管も例外ではありません。私たちの研究室では、水道管ネットワーク上に配置されている地中埋設消火栓から採水し、水中に含まれるわずかな固形物質や溶存物質の組成や量から水道管内面の劣化状況を推定する手法の開発を目指しています。

   
左:消火栓からの採水 右:一般細菌数の分析中